分譲マンションへの長期修繕計画の備え付けについては、平成16年国土交通省より
「マンション標準管理規約」として下記のように定義付けられています。
マンション標準管理規約第32条3に管理組合の業務として、長期修繕計画の作成又は変更に
関する業務として位置づけられています。その内容は、以下の通りです。
T 建物を長期にわたって良好に維持・管理していくためには、一定の年数の経過ごとに
計画的に修繕を行っていくことが必要であり、その対象となる建物の部位、修繕時期、
必要とのなる費用等については、あらかじめ長期修繕計画として定め、区分所有者の間で
合意しておくことは、円滑な修繕の実施のために重要である。
U 長期修繕計画の内容としては次のようなものが最低限必要である。
1 計画期間が25年程度以上であること。なお、新築時においては、計画期間を30年程度
とすること修繕のために必要な工事はほぼ網羅できていることとなる。
2 計画修繕の対象となる工事として外壁補修、屋上防水、給水管取替え、窓及び玄関扉等
の開口部の改良等が揚げられ、各部位ごとに修繕周期、工事金額等が定められているもの
であること。
3 全体の工事金額が定められていることであること。
また、長期修繕計画の内容については定期的な(おおむね5年程度ごとに)見直しを
することが必要である。
V 長期修繕計画の作成又は変更及び修繕工事の実施の前提として、劣化診断(建物診断)
を管理組合として併せて行う必要がある。
W 長期修繕計画の作成又は変更に要する経費及び長期修繕計画の作成等のための劣化診断
(建物診断)に要する費用の充当については、管理組合の財産状態に応じて管理費又は
修繕積立金のどちらかでもできる。
ただし、修繕工事の前提としての劣化診断(建物診断)に要する費用の充当については、
修繕工事の一環としての経費であることから、原則として修繕積立金から取り崩すことと
なる。とあります。
実際に各社のその成果品である長期修繕計画書とか算出根拠などを、分析して見ると二分
されているようです。
T 修繕項目が大雑把で金額設定もいわゆるどんぶり勘定的なもの。
修繕積立金の適正性とか一般的修繕周期による計画修繕の時期把握などには十分で、
「計画的な維持保全と資金計画」を考えるならそれで良いと思います。
U 修繕項目も細かく分類され、数量、金額算定根拠も記載されているもの。
いろいろなタイプに分かれ、修繕関係技術者が計画書を作る過程で意思をその計画に
織り込み、それも複雑多岐に渡るもの。
に分かれていると思います。
長期修繕計画書のあるべき姿を考えるとUの修繕項目も詳細に分類され、数量、金額算定根拠
も記載されているタイプの充実が本来求められ、建物の実態を正確に把握した確かな長期修繕計
画書で維持管理することが求められます。
建築関係のみでなく電気、給排水設備、エレベータ、機械式駐車場等があり、計画作成者が
すべてを専門家のレベルまで理解して計画しているかといわれると無理があり、多くが別途各
専門家からのデータを採用し、その建物の修繕パーツを考えられるだけ網羅することは建物を
点検判断(劣化診断)して維持管理する上で最も必要な事であります。
長期修繕計画書は実務運用が出来なければならず、本来必須としてその修繕箇所が発生する
時期、数量、修繕方法、修繕予算の検討が出来て、長期修繕計画書と連動して工事業者等に要請
する見積書の積算数量、仕様書が提示出来るもので、また同時に修繕予算の資金欠落の予測、
修繕積立金の適正化指針、持分比率による部屋タイプごとの積立金の案分、インフレ予測、借入
金の返済方法、金利計算、など修繕積立金等の予算運営管理等も出来、修繕工事が発生した後、
速やかに新しい長期修繕計画書が連動して作成出来るものが理想であります。
しかしながら詳細で複雑多岐に渡れば作成者の考えが系統化されにくく、詳細で複雑に成れば
成る程、長期修繕計画書を理解することが難しくなったり、根拠への遡及が不可能であったりと
問題も多くなるのは必定であります。大多数の詳細な長期修繕計画書は、パソコン等の表計算
システム、ワープロ機能を利用して各自の作成者の考え方(社内での統一性は無く、各担当者の
能力、職人的な感覚、思い)を単発で抽出して計算、グラフ等を手作業で作成するのが現状と
思われます。
それは均一で系統化しデータベース化した積算区分、積算方法で作成されていなく、考え方、
捕らえ方がそれぞれ実務作成者個人の感性で微妙に違い、その実務作成者の内側では信頼性は
充分にあろうが、しかしそれ以外の第三者の担当者(管理会社の担当者ないし修繕委員等)が
理解して的確に説明及び疑問に答えて実務の運用をするには難があり、またデータベース化して
いない為に長期の時間が経過すれば作成者が不在になり、データを消失して保守管理が出来なく
なり、数量根拠等の捕捉の説明が出来ず長期修繕計画の継続性が望めないのが現状で、年経過に
よる見直しの加除訂正も難儀な技であろうと思われます。
この様な難儀を解決する為には個々の個人の情念の手計算の手法の長期修繕計画書ではなく
系統化しデータベース化され一連計算で作れる長期修繕計画書であれば正確で短期間で作成
出来、上記述のネガティブな要素は解消され、計画書の保守管理は容易でデータの消失も無く、
修繕情報の提供の要望があれば多くの時間をかけることなく必要な修繕情報を提供出来るもの
でなければなりません。
データベース化された長期修繕計画を作成するには長年月に渡る修繕ノウハウの蓄積とその
多義に渡る顧客の要求とノウハウをコンピュータのシステムに組み入れる構築力が必要であります。
継続性の望めない長期修繕計画書は本来の長期修繕計画作成義務者である管理組合として絵に
描いた餅に過ぎず、ただマンション標準管理規約第32条3の規定をクリアしているだけで本来の
目的は達成出来ません。
弊社は、今までに関西を中心に20数年間に渡り修繕改修専門工事業
者として、また改修設計者として携わり、その多くの実際の工事分析データを保有し運用してい
ます。
上記の本来あるべき姿の長期修繕計画書の必須を網羅した「修繕計画作成装置」をオフィス
コンピュータで開発して以来、数多くの改修設計を行い複数の会社にデータサービスを行って
来ました。
このシステムは昭和61年から開発を始め、平成7年に特許出願、平成8年特許公開をし、
平成10年に「修繕計画作成装置」として8項目の特許を取得しております。
この「修繕計画作成装置」での処理件数は、関西地方を中心に約1160棟余り、
マンション世帯数約125,000戸余りの業務実績があり、現在も問題なく推移しております。
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